Cultre Power
NPO ASIAS/エイジアス


















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イントロダクション

母校の小中学校が統廃合などで廃校になるのは、誰にとってもやはり寂しいことだろう。
学校をアートのスペースとして利用する事例は、今ではそれほど珍しいことではなくなったが、その先駆的な活動が話題にのぼったのは、1994年の夏休みに杉並区立和泉中学校で行われた「IZUMIWAKU プロジェクト」だった。そこで教師をしていたアーティストの村上タカシの発案によるものである。2001年には新宿の旧牛込原町小学校で、セゾンアートプログラムが主催した「アートイング東京2001」が開催され、その後、あちらこちらで学校や廃校が活用される催しが増えてきた。
ASIAS(エイジアス)の廃校プロジェクトは、都市の過激な新陳代謝から落ちこぼれた「学校」という昔懐かしい場に、新たな息吹きを与えようとする画期的な活動だ。今回、ASIASの調査を担当した武蔵野美術大学芸術文化学科芸術文化政策コース大学院の佐藤美保さんは、もともとアーティストで、修論では東京都の廃校活用政策を研究している、いわば本格的な「廃校リサーチャー」といえる。
ASIASとは“Artist‘s Studio In A School”の略称だが、「芸術家と子どもたち」という特定非営利活動法人(NPO団体)の主要な活動をなし、その主旨は、芸術家が学校で子供たちとワークショップ型授業を行い、新たな価値観の創造を介して双方が未知の体験を共有するというものだ。この斬新なミッションの提唱者、堤康彦氏は勇気ある脱サラで、企業協賛や財団の助成金を得ながら運営に携わっている。多くの企業と持続的な良い関係を結びながら、発展的連携を構築していかれるのは、日本の将来へ向けた息の長い文化のインフラ整備への評価はもとより、かつてサラリーマンだった堤康彦氏の存在が、稀有なライフスタイルへの共感を呼び起こしているためもあるかもしれない。
都市の喧騒から忘れられたオアシスのような桃源郷、廃校になっても、学校の広々とした校庭では、近所の人々がすすんで草刈をし、子どもたちの笑い声が絶えない。学校には老朽化した建物も多いが、学び、遊ぶ場のはじまりでもあり、そのスペースの再生と学習の脱制度化にストレートにかかわっている「芸術家と子どもたち」の活動は、まさに湧き出る心の清水のように新鮮である。

(岡部あおみ)