「自然体でやる」。震災に抗い、破壊力を構築へと転換していくアーティスト杉山知子さんの自然体には、母なる大地の匂いがある。神戸という故郷にこだわるのは、二重の意味で被災した自らの「身体性」の克服と、治癒への意志があるためだ。それは、生半可な「癒し」といった受動態を吹き飛ばす。C.A.P.の活動は、じつに愉快で晴れ晴れとするアート・アクションではないだろうか。
 C.A.P. HOUSEは三宮か元町の駅から、山側にトアロードを登っていったところにある。大通りからやや斜めに入った影にあり、その巨大な全貌を発見して驚愕する。1920年代から40年間以上も可動していた移民収容所の陰影。長期間の船旅に慣れるためか、宿泊施設は船室みたいに天井が低い。そこをアトリエ・スペースとして作家たちが使っている。25万人が海を渡った、夢と恐怖と戦いの歴史を、彼らは現代の物語へと描きかえねばならない。そんな変革のエネルギーも湧いてくる。消毒された平凡な記念館などにせず、歴史の痕跡が残るスペースのままで、風化するまで作家たちに使わせてあげたい。この建物を差し出した神戸市の勇断にもエールを送る。
N.P.O.として再出発したC.A.P.とともに、神戸に新たな活力がみなぎってくる。(岡部あおみ)
©photo Aomi Okabe