武蔵野美術大学 芸術文化学科

syllabus / 授業概要
  • デザイン論
  • 高島 直之
モダンデザインの成立と展開を主に欧米の歴史に沿って概説する。デザイン史ではなく、モダンデザインが提起した問題をメディア基盤の発達段階と社会文化史と照らし合わせて、現代のデザインのありかを再考する講義科目。
  • 造形民俗学 I/II
  • 工藤 員功
現代に生きる私たちの身の回りには実に数多くの多種多様なモノがある。それらの多くは、新たに開発された素材で造られた画一的な機械製品であり、電気・原子等の力を利用して使うモノも少なくない。だが、中には草や木や土など自然から得られる素材を用いて造られたモノもある。わずか数十年前までは、そうした自然素材で造られたモノによって人々の生活は成り立っていた。それらは地域によって異なる自然環境や、受け継がれてきた暮らしぶりの中で造り出された造形物であり、中には現在の機械製造形物の原型を有するものもある。そうした視点をふまえ、ここでは主として自然素材を用いて造り出されたモノを取り上げ、素材や形態を見つめながら、人々の生活と造形を考えたい。
  • 原書講読 I
  • 前沢 明枝
英語圏の絵本と、絵本について書かれた専門書からの抜粋を教材に、英語の総合的な運用能力を伸ばし、同時に絵本についての理解を深めることを目標とする。
絵本読解では、テキストの内容を読むだけではなく、絵や英語の音・文体、絵と文章の配置、日本とは異なる文化的背景等にも注意を払い、作者のメッセージを丁寧に読みとることを心がける。最終的には、英語テキストを日本語で再構築し、受講生がそれぞれ独自の翻訳を仕上げることを課題とする。
専門書読解では、絵と言葉というふたつの異なる記号が相まって絵本にどのような効果を生み出しているのかを読む。各人の担当部分については内容を把握した上で、実際に絵本などを使いながらポイント解説(プレゼンテーション)を行う。
  • 原書講読 II
  • 花光 里香
異文化コミュニケーションに関するさまざまな文献を読むことにより、既成概念からの解放、意識の改革、そして相対的なものの見方を身につけることを目標とする。異文化は外国にあるものと思われがちだが、男女や世代の違い、地域差なども異文化であり、私たちは常に異文化の中で生きている。さまざまな異文化について学ぶことによって社会を異なる視点で見る力を養い、異文化を通して自分の文化を知り、自己発見を促すことを目指す。文献を読むだけでなく映像資料など補助教材を用いて内容への理解を深め、受講生の意見交換を大切にしながら進めていきたい。
  • メディアと情報I
  • 村田 良二
今日、大きな変化をとげつつあるメディア環境は、我々の知的営みとどのように関わってくるのであろうか。知識と情報の蓄積・伝達・共有という観点からメディア技術の歴史と現在の状況を考察し、博物館における情報のあり方を探る。また、博物館ドキュメンテーションの電子化、国際標準化の動向を通じて、博物館の資料情報がこの新しい環境にしめる位置について検討する。
  • メディアと表現II
  • 加島 卓
「メディア」や「情報」とは、なんとも便利な言葉である。しかし、これが何を意味するのか、極めて曖昧だ。そこで本講義はこうした曖昧さを引き受けつつ、博物館においてメディアや情報を活用・発信することの意義を「考え方」において身につけることを目指す。前半はメディア論や社会学の視座から理論的な関心を深め、後半はメディア・リテラシー論や知的財産権、デジタル・アーカイブ、情報発信、市民社会論を踏まえながら実践的な事象への理解を深める。これらを通じて、博物館における情報・メディアの意味解釈や表現方法に関する能力を養うことを目指していく。
  • 表象文化論 I(絵本)
  • 申 明浩
人間本来の欲望、具体的な自己表出行為、そして、他者への積極的な自己表現であるものづくりは、今日のメディアの多様化によって、チャンネルの選択をより重要視させるようになった。何を、如何に表現するのか。それは、言語や文字、視覚や聴覚の領域のみならず、素材や空間や時間要素までを含めている。‘人間’ が起す情報発信行為、作品作りは、作り手と第三者の両者間の共通認識や表現記号によって意味が伝わる。表象文化論1Aの授業は ‘絵本’ というジャンルから表象論を考える。様々な文化と人間関係の媒体となる絵本、大人と子ども、時代と文化と多様な技術を統合させるジャンルである絵本を題材にして、新たな角度から ‘表現’と ‘現象’ を考える授業である。
  • 表象文化論 II(身体)
  • 恩地元子
今世紀に入って、身体をとりまく諸問題は、舞踊のような、身体の動きそのものが主要な関心事である芸術だけではなく、様々なジャンルの芸術体験のなかで重要な位置を占めるようになった。そこで、芸術を、美術、建築、映画、演劇、舞踊、文学、音楽など、通常行われている分類にとらわれずに、身体の表現であるという観点から、とらえ直してみたらどうだろうか。身体を、足、手などのパーツごとに分けて観察し、それがどのような役割を果たしているのか、その人が属している社会、時代、文化の違いは、どのように反映しているのか、また、それによってどのような表現が可能か、ものとどのような関係が成立しているのか、などについて考え、論じる。
  • 表象文化論 III(マンガ)
  • 伊藤 剛
マンガは現代日本のサブカルチャーの主要な一翼を担い、とりわけキャラクター表現の中核をなしている。またアニメやゲームなどと共に、近代以降はじめて日本が文化的なものを積極的に輸出するに至った類例のない表現といえる。そのマンガに対し、(1) 個々の作品論、作家論ではなく表現としての特性を探る(2) マンガ表現史という視点を設定し、それを記述するためのモデルを提示するという二つのアプローチから、マンガという表現がいかに「マンガとして」成立しているかを解き明かす。講義内容は、現在の「マンガ論」における最高水準を提供するものである。
  • 表象文化論 V(フード&アート)
  • 新見 隆
いまのところ、美術大学で、料理を教えている人はいないようだが、これが、いつ変わるようになるかは、誰も知る由がない。そんな例は、いくらでもある。
教育の制度によって、ただ人間の行為がジャンル分けにされているだけのことなのだ。
ヨーロッパのアカデミックな伝統では、長く、ファイン・アートと装飾美術、あるいは工芸が、わけ隔てられてきたのだが、そんなことを今日、ただ鵜呑みにしている人は誰もいないのと同じだ。はたして誰が、料理がアートではないと、あるいはデザインではないと、言いきれるだろうか。もちろん、料理の基本には、まず、食物としての栄養学や、食品衛生学があり、その上にたって調理技術があることは、誰でも知っている。
その問題を、ここではちょっとわきにおいて、けれどつねににらみつけながら、授業では、食文化とアートとの関係の、現代的考察を、さまざまな角度からやっていこうと思う。
料理をつくったり味わったりすることのなかには、人間の、精神的な、文化的な活動の原点があるし、食の環境のひろがりは、広大であって、はかり知れない。
食材をささえる産業、環境、風土、調理技術、民俗文化との関係、伝統と革新のせめぎあい、地域性と民族性、社会制度と経済、味というデザイン、食器、カトラリーやインテリアのデザインなど、、、。
数年前、ネオ・ジャポニズムと呼ばれた、日本のデザインやクラフトのブームがパリを中心にして起こったが、その火付け役になったのは、長く伝統的で、保守的だったフランス人の食文化を突き崩した、日本食ブームだったのは、いまでは誰でも知っている。やはり、食文化は、人間のもっとも根源的な、文化的活動と欲求の指針なのである。
  • 表象文化論 IV(映画)
  • 立花 義遼
まず「映画」を観ること、そして、その「映画」について語り合うことによって「映画の楽しみ」を発見・再発見できれば、と考えている。また、映画に関する諸言語 ( 作家論・スター論・精神分析理論・記号論・フェミニズム理論等々 ) を手がかりにして「映画の観方」を検討したり、作品制作の時代背景にも目を向けてみたいと思っている。
  • 表象文化論 VI(環境と建築)
  • 児島 学敏
グローバルなスケールの経済活動が大きなうねりとなって私たちの生活環境に変化をもたらしている現在、私たちを取り巻く環境や社会も大きく変わりはじめています。身近にあった街や社会の関係が稀薄になり「場所の力」を失い、そこには舞台装置と化した都市が存在しています。ここではその都市の現実を再検証し、都市の歴史や記憶の保存、さらに再生を通してこれからの都市と環境のあり方について考察していきます。
  • 表象文化論 VII(イメージとジェンダー)
  • 千葉 慶
わたしたちは、視覚的表象に包囲されている。
例えば、わたしたちはテレビやネット、ケータイ、あるいは街を歩けば隙間なく広告に取り囲まれている。たとえ、意識的に見ようと思わなくとも、視覚的表象は、向こうからわたしたちの視野に飛び込み、わたしたちに常に何かを呼びかけて来る。そして呼びかけられたわたしたちの思考・行動は、そこから何がしかの影響を受けないわけにはいかない。にもかかわらず、存外わたしたちは視覚的表象を読解することに対して、意識的であるわけではない。本講義では、ジェンダー分析の方法論を用いて、意識的に視覚的表象を読解することを学びたい。もちろん、視覚的表象を読解する方法論は、ジェンダーに限らないが、わたしたちが「ヒト」である限りにおいて、「ヒト」のあり方を規格化・統御しようとする知の規制であるジェンダー秩序を意識的に読解する訓練は、まさに表象に包囲された現代社会を生き抜くために必要不可欠なものである。
  • 写真論 I(近代・写真史)
  • 金子 隆一
1920年代に始まる近代的な写真表現を追求する動向は、ピクトリアリズム(絵画主義)の写真表現を否定し写真だけが可能にする新しい視覚にもとづかなければならないことを主張した。それはカメラとレンズ、感光材料の特質を十分に生かすという機械主義でもあった。さらに大量複製と結びつくことによって、視覚メディアとして写真の社会性を明らかにしてゆく。と同時に、その写真の本質を追究する動向は単なる技術発達史とは異なる近代的な写真史を成立させた。本授業では、芸術としての写真のあり方を追求したピクトリアリズムの写真表現にはじまり、1920〜30年代の多様な写真表現の展開と印刷メディアと結びつくことによって社会性を獲得し、様々な写真のあり方を成立させた近代写真の軌跡をたどってゆく。
  • 写真論 II(現代・写真史)
  • 金子 隆一
第2次世界大戦の終結は、政治的世界に再編をもたらしただけでなく写真表現にも新たな枠組をもたらした。写真だけが可能にする表現の追求は、テレビ等の出現によって新たな社会性が要求され、ヒューマニズムを標榜するパブリックなまなざしに対しての不信からプライベートなまなざしのあり方が模索される。1950年代後半から始まるこの動向は現代的写真表現の始まりである。そして1970年代に入ると近代写真成立後の中で獲得されてきた写真の本質への問いかけがなされ、写真の歴史の読み換えがなされる。さらに80年代にはポスト・モダニズムの潮流の中で多様な表現がジャンルを超えて花開いていく。本授業では、「写真論I(近代・写真史)」の後を受けついで、1980年代くらいまでの写真史の流れをたどってゆく。
  • アーツプロジェクト I〜VI
  • 全専任教員、川本雅子
日常のカリキュラムとならんで、学外での実践的なフィールド・ワークのプログラムを大切なものと考えています。専門領域を深めると同時に、社会に対するはばひろい視点を培うことを目的としているからです。
美術やデザインの展覧会やシンポジウム、ワークショップ、出版企画などを学外の組織と共同で行っていきます。単発の活動だけでなく、美術館や画廊、公共の多目的ホールなど、文化施設に対してのコンサルタントをしたり、調査や広報・宣伝の協力をしたりもします。学生でありながら、実際の社会のなかに出て行くことで、実践的な文化活動を学びます。
初期の調査やプランニング、スケジュール作り、準備と交渉、経費管理、記録などを学生たちがチームをつくって準備し、学生達の責任で実施します。
  • デザイン政策論
  • 小田嶋 孝司
ブランドひとつを生み出すまでにどれだけ多くの「検討」が必要か、実務作業を通じて学ぶ。理念や、対象の特徴、市場での競争力を明示し、象徴する名前を考案し、ブランドロゴのデザインを創出する。さらに市場導入に関するコミュニケーション戦略を考え、サービスのあるべき姿をも設計する。その間、どんな専門家を起用し、どうお金と工程の管理をすべきかを体験する。全体を通じて企業とは何か、お金を支払うに値する価値とは何か、時代とは何か、そしてデザイナーとは何かを深く考察し、ジェネラティビティ(次世代価値創造への積極的関与)の意味を理解する。
  • アートセラピー
  • 石黒 敦彦
「芸術療法」および「福祉とアートの新しい関係」について、アートマネジメントを専攻する学生の立場から学ぶ授業です。将来、芸術文化事業に就く可能性の高い学生たちに、福祉の現場とアートがどのように関っているかを、最低限、体験させることを目的としています。(1)芸術療法の理論と現場を見学・体験する授業、(2)福祉の現場でどのような芸術活動が行われているかを知る講義、(3)授産施設の見学、が中心になります。その他に、授業日以外にもワークショップ・プラニング、視覚障害のあるアーティストと一緒に展覧会をまわる会なども設定し、それへの参加を求めます。石黒敦彦および芸術療法家・加藤庸子の2人が交互に指導いたします。
  • 広報論
  • 保坂和志
「書くこと」、「語ること」、「考えること、「感じること」に、興味をもって、世界と人間の在り方について共に考えようとする人、すべてが対象です。
授業のすすめかたは、基本的には、講義と考えていますが、ディスカッションや、ワークショップ的なものを、取り入れる可能性もあります。
  • 文化社会論I
  • 小川希
この講義では、特にアート・プロジェクトと展覧会に注目しながらインディペンデント・キュレーション(制度化されたスペースを越えたキュレーション)の最近の傾向をたどります。展覧会とは、モノを展示するだけにとどまらず、ドキュメンテーション、アーカイブ、社会調査、コミュニティーの取り組み、行動と介入、これらのさまざまなフォームを探るものといえます。さらに音楽やDJ、建築、イヴェント、舞台やダンスを含むアートのフィールドを越えたイニシエティブについても同様に取り上げます。
  • 文化社会論II
  • 倉林靖
いま、アートの展覧会やイヴェントを企画するとき、アートについての政策立案を行うときなど、どんな場面でも、芸術と社会との関連を広く文化的視野で眺める「文化理論」的な知識と思考が求められています。この講義では、「文化」や「芸術」が、どんな社会的「制度」として成立しているのか、という問題を、ひじょうに基本的・根本的なレヴェルで皆さんと一緒に考えていこうと思います。毎回、講義内容に関する感想・意見を書いてもらったり、ディスカッションを交えながら、わたしたち自身の切実な「生」の問題として捉えていく視点を獲得していきたいと思っています。