授業記録
芸術文化特論 Vol.2 金丸弘美氏
フードクライシス 食が危ない!
1952年佐賀県唐津市生まれ。
執筆や企画・編集プロデュースのほか、地域活性化のアドバイザーまでてがける。 最近のテーマは、農業、食材、環境問題、地域活性化、高齢者の生きがい、それに以前から追いかけてきた映画。 特に農業、食材に関してはここ15年で北海道から沖縄まで全国の農村500カ所、東京の農家や野菜売り場60カ所を自ら回る。食に関する執筆を続け、現在も全国を巡っている。現在の最大の関心は自然循環型農業と味覚教育。 食環境ジャーナリスト、ライターズネットワーク相談役、日本ペンクラブ会員環境委員、オリザ・ジャポニカ・クラブ代表、奄美長寿子宝プロジェクト推進協議会委員、大分県食育事業アドバイザー。
執筆や企画・編集プロデュースのほか、地域活性化のアドバイザーまでてがける。 最近のテーマは、農業、食材、環境問題、地域活性化、高齢者の生きがい、それに以前から追いかけてきた映画。 特に農業、食材に関してはここ15年で北海道から沖縄まで全国の農村500カ所、東京の農家や野菜売り場60カ所を自ら回る。食に関する執筆を続け、現在も全国を巡っている。現在の最大の関心は自然循環型農業と味覚教育。 食環境ジャーナリスト、ライターズネットワーク相談役、日本ペンクラブ会員環境委員、オリザ・ジャポニカ・クラブ代表、奄美長寿子宝プロジェクト推進協議会委員、大分県食育事業アドバイザー。
安心・安全な食べ物は何か。怖いと思っているのはなぜか
「ダーウィンの悪夢」という映画を最近みた。九州の2倍の面積を誇る、アフリカ最大の湖、ヴィクトリア湖で起きた悲劇のドキュメンタリー映画である。
イギリス植民地時代の1950年代に、湖に生息していた淡水魚が乱獲により激減し、その後マグロよりも大きいナイルバーチという魚を放流した。この魚は肉食であり、すでに壊滅の危機にさらされていたヴィクトリア湖の生態系を完全に破壊してしまった。
実は、ナイルバーチはスズキに似ている魚のため、日本では白身魚として冷凍食品としてよく食されている。輸出するために、ヴィクトリア湖周辺には加工工場が建てられ、アフリカ全土から仕事を求めて人が集まった。
しかし、仕事につけなかった人は売春をし、エイズのまん延にも繋がった。
この連鎖をドキュメンタリーとして映画にしたのが「ダーウィンの悪夢」である。
私たちの身近な食べ物をみてみよう
日本の自給率は40パーセントであり世界178カ国中129位で先進国としては最も自給率が低い国である。年間353億ドルもの食料を輸入に頼る。また、国内で育てている小麦、野菜なども、種はアメリカからの輸入が多いのが現状だ。
国家はこの状況を危惧し、平成22年を想定した食料危機マニュアルを作っているが、あまり知られていないだろう。このマニュアルによると、食料は国が管理する配給制とし、うどん、肉などは10日に一度程度しか食べることが出来なくなるという。
たとえば、現在の蕎麦。蕎麦粉の国産は昨年度で20パーセント、今年は14パーセントの自給率しかない。最近ブームの讃岐うどんにおいては、日本で作られているものは5パーセントにしかならない。 日本の都市は自給できない。東京は1%、大阪は2%、神奈川3%である。農家の数は1960年605万戸から2000年298万戸に激減している。日本で栽培する野菜の種の9割は海外のものであり、輸入食材346億円は先進国でダントツ。 世界の食料の1割を輸入している。日本の食べ物のために海外では日本の農地の2.5倍が使われている。5300万トンの食糧が1万キロメートルかけて運ばれる。フードマイレージという言葉がある。 食料を運ぶためにかかる費用も含めた考え方であるが、これも当然日本が一番となる。詳細は『フードクライシス 食が危ない!』金丸弘美著 ディスカヴァー・トウエンティワン)にて紹介。要するに、食べ物は何処から来たのか分からない。 ふだん食べているものの足下はものすごい不安定なのである。
たとえば、現在の蕎麦。蕎麦粉の国産は昨年度で20パーセント、今年は14パーセントの自給率しかない。最近ブームの讃岐うどんにおいては、日本で作られているものは5パーセントにしかならない。 日本の都市は自給できない。東京は1%、大阪は2%、神奈川3%である。農家の数は1960年605万戸から2000年298万戸に激減している。日本で栽培する野菜の種の9割は海外のものであり、輸入食材346億円は先進国でダントツ。 世界の食料の1割を輸入している。日本の食べ物のために海外では日本の農地の2.5倍が使われている。5300万トンの食糧が1万キロメートルかけて運ばれる。フードマイレージという言葉がある。 食料を運ぶためにかかる費用も含めた考え方であるが、これも当然日本が一番となる。詳細は『フードクライシス 食が危ない!』金丸弘美著 ディスカヴァー・トウエンティワン)にて紹介。要するに、食べ物は何処から来たのか分からない。 ふだん食べているものの足下はものすごい不安定なのである。
個々のデザインではなく全体を見ることができるデザインが必要
日本は1964年のオリンピックで変わってしまった。大きい道路と建設し、大きな店舗、そして、アメリカ資本主義のM社など。どこに行っても同じ場所のように見えてしまう。デザイナーが建築個々で考えることはあっても、街を全体で考える人はいない。
これからは、地域全体をみながらデザインをできる人が本当にこれから望まれる人材なのであろう。大きい道路と大きな店舗に対抗して小さな農家、村の景観を守ろうとして出てきたのがスローフードである。
日本では農家が自らつくった野菜に値段を付けることができない。そのため、どれだけ手をかけた野菜であっても安く取引されてしまうことがある。このリスクによって農家の多くがやめていってしまったのも事実である。イタリアも同じ状況であった。 そういう中から生まれた考えがスローフードの始まりであった。 日本では、スローフードのことを誤解している人が多い。「郷土の伝統料理」、「ゆっくり食べること」などと勘違いをした紹介がされているのも事実である。 しかし、本来は、農家の人たちが自ら作って、自ら売るという流通と経済システムを確立するために、イタリアで始まった運動である。実は、スローフードは、もともとイタリアに本部を置くNPO法人(Non Profit Organizations=非営利組織)の名称であり、その団体が行っている地域の食文化を守り発展させていこうという哲学と運動のことをさす。 そうして具体的な食をテーマにしたイベントや出版や大学運営、特産品作りのアドバイスなどの事業をしている。 イタリアには22万以上のNPOの団体があり、そのうち6万の団体が、行政や政府と連携した活動しているが、今ではもっとも大きなNPOがスローフード協会である。
本部は、イタリア北部のピエモンテ州ブラにあり、専任スタッフが140名働いている。しかも雇用されているスタッフのほとんどは地元の人たちで運営されている。地域に根ざしたNPOが食文化の活動を行うことで、地域の活性化をも図っている。
スローフード協会は、本部の他に支部(コンビヴィウム=共生)がある。こちらは会の趣旨に賛同した人たちが自主的に立ち上げたもので、本部の認可があればだれでも作ることができる。
イタリアには、400もの支部が、世界では800の支部があり、日本では北海道から沖縄まで46の支部が現在ある。また、大学、出版などさまざまな分野の事業を自らのNPO内でおこなっているのである。
日本では農家が自らつくった野菜に値段を付けることができない。そのため、どれだけ手をかけた野菜であっても安く取引されてしまうことがある。このリスクによって農家の多くがやめていってしまったのも事実である。イタリアも同じ状況であった。 そういう中から生まれた考えがスローフードの始まりであった。 日本では、スローフードのことを誤解している人が多い。「郷土の伝統料理」、「ゆっくり食べること」などと勘違いをした紹介がされているのも事実である。 しかし、本来は、農家の人たちが自ら作って、自ら売るという流通と経済システムを確立するために、イタリアで始まった運動である。実は、スローフードは、もともとイタリアに本部を置くNPO法人(Non Profit Organizations=非営利組織)の名称であり、その団体が行っている地域の食文化を守り発展させていこうという哲学と運動のことをさす。 そうして具体的な食をテーマにしたイベントや出版や大学運営、特産品作りのアドバイスなどの事業をしている。 イタリアには22万以上のNPOの団体があり、そのうち6万の団体が、行政や政府と連携した活動しているが、今ではもっとも大きなNPOがスローフード協会である。
本部は、イタリア北部のピエモンテ州ブラにあり、専任スタッフが140名働いている。しかも雇用されているスタッフのほとんどは地元の人たちで運営されている。地域に根ざしたNPOが食文化の活動を行うことで、地域の活性化をも図っている。
スローフード協会は、本部の他に支部(コンビヴィウム=共生)がある。こちらは会の趣旨に賛同した人たちが自主的に立ち上げたもので、本部の認可があればだれでも作ることができる。
イタリアには、400もの支部が、世界では800の支部があり、日本では北海道から沖縄まで46の支部が現在ある。また、大学、出版などさまざまな分野の事業を自らのNPO内でおこなっているのである。
文化にお金をかけてあたりまえ
イタリアでは文化として食材が扱われている。文化的な場所での食事をおこない、多くの食文化と芸術の交流が行われている。スローフード協会の表彰式がオペラハウスなどで行われるのも、食文化が一つの文化として成立しているからである。
日本においても、似たような動きがある。三重県の『農業法人モクモク手づくりファーム』は、1983年に、養豚農家を中心に出資し、ハム、ソーセージの加工から、地ビール、レストラン経営、通販まで乗り出し、自ら直接消費者に販売することを始めたところである。
かつては三重県の伊賀の里人口8000人の山村だったところ。ここに農業を基盤とした加工工房やレストラン、ファーマーズ・マーケットなどを作り、動員50万人、売り上げ28億円をあげるようになった。従事者180名で、平均年齢27.5歳である。地域の雇用も拡大させた。
こういった地域の食に根ざし、新たな加工、販売、サービスの拠点を作り、地域に経済的にも活性化をもたらし、地域そのものが豊かになっていくという活動が、日本でも各地でも動きが始まった。 福岡県の葡萄の木のレストランで農家と連携して運営される「ぶどうの樹」。農家が結集し、市場、レストラン、加工品販売まで、地域全体で行う、大分県の大分大山農業協同組合などである。
しかし、まだまだ日本には地域の郊外にどこでもが同じような大型ショッピングセンターが建てられ、地域の特色が消えていってしまうというのが現状だろう。もうすこし、伝統的なものを大事にする文化が発達してもよいのではないだろうか。
かつては三重県の伊賀の里人口8000人の山村だったところ。ここに農業を基盤とした加工工房やレストラン、ファーマーズ・マーケットなどを作り、動員50万人、売り上げ28億円をあげるようになった。従事者180名で、平均年齢27.5歳である。地域の雇用も拡大させた。
こういった地域の食に根ざし、新たな加工、販売、サービスの拠点を作り、地域に経済的にも活性化をもたらし、地域そのものが豊かになっていくという活動が、日本でも各地でも動きが始まった。 福岡県の葡萄の木のレストランで農家と連携して運営される「ぶどうの樹」。農家が結集し、市場、レストラン、加工品販売まで、地域全体で行う、大分県の大分大山農業協同組合などである。
しかし、まだまだ日本には地域の郊外にどこでもが同じような大型ショッピングセンターが建てられ、地域の特色が消えていってしまうというのが現状だろう。もうすこし、伝統的なものを大事にする文化が発達してもよいのではないだろうか。
(2006年9月5日)