武蔵野美術大学 芸術文化学科

卒業研究

2009

図工と造形あそびのデザイン—アートキットいろは箱—
秋山加奈
(楫ゼミ)
プランニング
  秋山加奈
昨今の受験至上思考や美術教育の影響によって、子どもたちが自由に表現・創造する機会が減少し、造形離れが進んでいるように思われる。 本作品は、こうした状況に対し、子どもたちの創造力・感性を育むことを目的とし、教育要素を含む図工と造形の体験キットを制作した。 子どもが行う造形遊びの意味とは何か、その効果はどんなものかを提示し、大人と子ども双方の視点から、家庭や地域施設での使用を想定した、ワークショップ形式のプログラムを提案する。 造形離れの原因として、子どもが表現する世界の解釈の難しさや、学校での図工・美術が学校外での体験に結びつかないこと等が挙げられる。 これに対し、現代の美術教育をベースに、手づくり遊びと自由な表現を楽しむプログラムを設定した。工作や美術が苦手でも造形遊びができるように、アドバイスやポイントを提示。 また、身近な大人がプチ ファシリテーターとして、子どもの自由な表現を受け入れ、評価することへのサポートも行う。子どもと大人が共に手を動かすことで、互いの視点からものづくりの喜びを再発見し、より豊かな創造行為への促進へと導いていく。 メディアの発達、子ども向け商品の増加によって、大人から子どもへあらゆる情報・モノを与えることが容易になっている。 幼い頃から様々なことを教えておいた方が良いという早期教育が重視されることも多く、子どもの質問に対して、大人たちはどんなことにも答えを用意してしまっている。 子どもに限らず、幼児から大人になっても、私たちはあまりにも“教えられすぎている”ようである。しかし重視するべきは「自ら発見する」ことである。 映像や言葉などの実感を伴わない知識だけではなく、直接ものに触れ、自らの五感を育てていくこと、工夫してものづくりを行うことこそが、本当の「生きる力」のもとになる。 人が持つイメージや表現には明確な答えがなく、表現や造形遊びが自由であるがゆえの“面倒臭さ”があるが、これと向かい合い、知識や技術を一方的に享受する態勢から、自分からヒト・モノにアプローチしていく姿勢を身につけて欲しい。
  楫義明教授
アートキットの功罪については様々な意見があるが、完成形という正解に向かっての要素が多い点が、子ども達の創造性の育成という視点で疑問視されている。 秋山のアートキットには答えがない。答えを示す代わりに、大人が子どもと一緒に同じ目線で造形遊びに加わり、子どもらしい発想や、大人の知恵などの共同によって、一つの答えが生まれてくる。 両者にある造形への苦手意識を克服し、創作の喜びを知る、新しい体感型教育キットである。